早稲田商店会を始め早稲田大学の周辺の7商店会480店で構成されている早稲田大学周辺連合商店会は、夏枯れ対策として1996年8月に実施したイベント「エコサマーフェスティバル」の成功をきっかけに、当初のテーマであった環境・リサイクルだけではなく、バリアフリー、震災対策、情報化、地域教育と多角的にまちづくりに取り組んでいる。リサイクル活動については「全国リサイクル商店街サミット」の開催で全国に活動の輪を広げている。
今では、これらの活動も商店会のメンバーのみならず早稲田大学の学生、教職員、行政、住民団体、身体障害者団体、まちづくりやリサイクルに関心を持つ他大学の研究者や学生と幅広い人々に支えられており、その内容も充実してきている。
事業の成功と定着の秘訣を、早稲田商店会 広報事業部 久保里砂子氏の話から考える。
■第1回 エコサマー・フェスティバル・イン・早稲田
早稲田大学周辺の商店会の対象顧客は、早大生約3万人と周辺住民約2万2千人である。しかし、大学が休みに入るとその学生がいなくなる。この「夏枯れ対策」として企画されたイベントが「エコサマーフェスティバル」である。当時、事業系ゴミの有料化を都が実施するとの問題もあったが、このイベントを企画したときには環境をテーマにすれば人が集まるとの単純な理由づけだったようである。
しかし、新宿区の全面協力や早稲田大学開学以来初の敷地無償提供を取り付けるなど、後のまちづくりネットワーク拡大の基礎を作っている。
早稲田大学周辺のまちなみ。 このイベントでは、エコ・オークション(使える粗大ゴミのオークション)や環境関連機器メーカーの展示など、環境・リサイクルに関するアトラクションも実施されている。また、後に「ごみゼロ平常時実験」や「エコステーション」で活躍する、「ゲームつき空き缶回収機、ペットボトル回収機」もこのイベントの準備段階で見つけ出したものである。
そして最も大きな収穫は、ゴミを分別収集することで再資源化が90%可能であることを目の当たりにしたことであろう。
今まで何もやっていなかった商店会ではあったが、このイベントの成功が、新しい動きの起爆剤となったようである。
■早稲田いのちのまちづくり実行委員会の誕生
連合商店会では、第1回エコサマー・フェスティバル以降、ごみゼロ平常時実験、修学旅行の受け入れ、大豆畑トラストMY豆腐作戦、防災プロジェクト、エコサマー・フェスティバルの毎年実施、エコステーションの設置、全国リサイクル商店街サミット開催等々多くの事業を実施している。
これは、環境・リサイクルだけではまちづくりはできない。もっと多角的に取り組まなければならないとの必然性からであり、継続してやらなければ意味がないとの思いからである。
そして、これらの活動は「早稲田いのちのまちづくり実行委員会」によって推進されている。委員会のメンバーは商店会のメンバーだけではなく、先にも記した多様な人たちによって構成されている。今回話をうかがった久保氏もそんな1人である。
■負担の少ないこと。楽しいこと。トクすること。
商店会活動は、会員の負担が少ないこと、活動が楽しいこと、会員がトクすることでなければ長続きしないと、実行委員会会長安井氏はいっている。それに一役かっているのが、イベントやエコステーションで活躍している、空き缶・ペットボトル回収機のラッキーチケットである。ラッキーチケットには協賛している店舗が色々知恵を絞り、多様なサービスを提供している。
楽しいことは遊び心であり、遊び心は知恵、知恵は知識の活用。情報が集まり、知識が増えれば知恵も出やすいものである。
儲かることは、精神的、肉体的にトクをすることで、単に金銭以上の充実感を得られる。ラッキーチケットによるサービスは関連購買など、直接的儲けよりプラスアルファの効果が大きい。
エコステーションの収支は下記の通りであり、加盟店の負担は1店当り3千円/月と一部事業であるが負担は必ずしも多くはない。
空き缶回収「早稲田エコステーション」
維持経費/月 収入/月
回収機リース代 9
家賃 7
回収料 2
電気代 1 加盟店会費 9
広告料(不動産広告)
2
回収機貸出料 10
合計 18 合計 21
■商売以外の部分で地域の人に歩み寄り
連合商店会の活動は、商業者主導のまちづくり活動であり、すべてが商売以外の部分でいかに地域の人たちに歩み寄るかという活動である。そのような活動に各店は楽しみながら参加し、商売につなげようと努力している。
これからの商店会活動、まちづくり活動のポイントは、このようなスタンスと、商店会の活動に興味を持つ人達をいかに活動に参加させるかではなかろうか。
安井潤一郎会長の語録に「我々は失敗と書いて経験と読む」という言葉がある。私たちも失敗を恐れず商店会活動、まちづくり活動に取り組んでいく必要性を強く感じる。
<<早稲田いのちのまちづくりの歴史>>
1996.7 メーリングリスト「RENET」誕生(当初は4人)
1996.8 第1回エコサマーフェスティバル
1996.9 早稲田リサイクルシステム研究会発足
1996.11「ゴミゼロ」平常時実験
1996.12いのちのまちづくり環境学習講座開催
いのちのまちづくり実行委員会発足
(早稲田大学政治経済学部の寄本勝美教授を座長に選出)
1997.3 教科書の再生紙化を求める要請行動
1997.5 第1回オール早稲田文化週間
(車椅子体験・防災体験)
1997.8 第2回エコサマーフェスティバル開催
1997.9 「エコステーション」1号店開設
(都電早稲田駅近く)
1997.11早稲田大学と東京都がエコキャンパスづくりへ連携
1999.3 いのちのまちづくり実行委員会に「学生部」を設立(最初の段階から
メンバーとして関わってきた早大生が「多くの学生に参加してほしい」
と働きかけた)
1999.4 早稲田に初の修学旅行生来方。岩手県の中学校から
(99年は4中学校1高校が来訪)
1999.5 第3回オール早稲田文化週間
1999.6 第1回全国商店街リサイクルサミット開催(早稲田商店会内)
1999.11東西線早稲田駅前・早稲田中高校正門脇に2号館開設。
2000.1 第2回全国商店街リサイクルサミット開催(東京都庁)
大豆トラスト運動開始
2000.4 たい肥にできる買い物袋開発。近く加盟店で試験導入。
実行委員会を中心とした「(株)商店街ネットワーク」設立計画
を発表。マスコミで相次いで取り上げられた。
2000.5 いのちのまちづくり実行委員会学生部が、「まっちワークグループ
早稲田」と名称を変更し、独立した早大の学生サークルとして
リニューアルされた。
2000.8 都電早稲田駅近くアサヒ銀行そばにエコステーション3号館開設。
(空き缶、ペットボトルのほか生ゴミ、トレーの回収もはじめる)
第3回全国商店街リサイクルサミット(熊本市。このサミットで
「(株)商店街ネットワーク設立」)