
山中温泉の土産として、地元はもちろんのこと、観光客にも愛され続けている娘娘(にゃあにゃあ)万頭。
山中石川屋の先代が山中温泉の名物となるお菓子を作れないものかと試行錯誤の末に考案した。時代の変遷を経ても変わらぬ人気を博している。山中石川屋の菓子づくりにかける情熱を3代目石川光良社長に披瀝願った。
山中温泉の旅館よしのや依緑園の先代が「石川さん、わしの好きな万頭を一つ作らんか。バブル期は旅館の土産菓子として娘娘万頭が飛ぶように売れていた。ところが、バブルの崩壊で温泉客の入り込みが悪くなってくるにつれ、業績が低迷した山中温泉を代表する旅館が立て続けに休業すると同時に、当社の売上が一気に落ち込む現実に直面する。その時、取引銀行に今後の業績の推移をシミュレーションしてもらった。
それまでの商いを見直し、原材料費の減少、定年退職者による人件費のダウンなどを勘案すると、当社は売上げが減少しながらでも堅実に利益を上げられる企業体質を構築できる見通しが立ったのである。
まさに、「災い転じて福と成す」である。そのうえ、バブルが崩壊した頃からジャスコや平和堂といった大型ショッピングセンターの加賀地区への出店が相次ぎ、各大型店からの出店要請に応じて多店舗展開を進めることができた。
これによって、温泉旅館オンリーだった時代に比べれば売上げは減少したが、利益を確保できる体質に転換できたのである。
現在では、福井の武生・鯖江・丸岡・春江、加賀温泉駅のアビオシティ、加賀・小松のジャスコ・平和堂、金沢の平和堂に納品している。時流に対応しようとした時に自社では何ができるのか、それを真摯に見据えていく姿勢と大型店からの出店要請がうまくかみ合ったと言える。
そして、菓子製造の機械設備に対する投資を積極的に行い続けてきたことも奏功している。「何をおいても今日こうしていられるのは先代が作った娘娘万頭のおかげであり、毎月命日には墓参りに行ってきれいに掃除していますよ」と先祖への感謝の念も忘れていない。
山中の水は全国的にも美味しく、量は豊富である。このような水で菓子づくりができることを石川社長は大きな喜びとしている。
原材料は、昔から風味があって美味しい、北海道の十勝・旭川・千歳周辺で収穫される小豆を使用。娘娘万頭で使用する餡は漉し餡のため、煮て潰すことから粒の大小はほとんど関係なく必要量さえ確保できれば良い。価格もつぶ餡に使用する大きめの小豆に比べると安定している。
昨今の市場には中国産の安い小豆が流通しているが、それは一切使用していない。娘娘万頭の作り方もほとんど変わっていない。美味しく食べてもらう菓子づくりには、三秤一体分離型と言って、小豆が砂糖と水を抱き込む塩梅が決まっている。砂糖を多く入れると水の量が不足して甘くてパサパサになるし、砂糖を減らすと水っぽくなってすぐに腐る。糖度の最適な菓子は食べた時に口の中で甘みと旨みが広がる。それが糖度51度〜52度ぐらいで、漉し餡のでんぷんが水と砂糖をバランス良く抱きかかえてくれる。先代からの餡作りの調合は今も受け継がれている。
石川社長の長男・喜一氏が新潟の菓子屋で2年あまり修業した。工場の現場から営業、店頭販売の接客まで、一通りの勉強をし、現在、工場の管理を率先している。
娘娘万頭以外に約40種類の商品アイテムを展開しているものの、娘娘万頭の売上が大部分を占めていることは言うまでもない。![]() |
商 号 | (株)山中石川屋 |
| 所在地 | 加賀市山中温泉本町2丁目 | |
| 設 立 | 昭和27年9月 | |
| 資本金 | 1,500万円 | |
| 年 商 | 約3億円 | |
| 従業員数 | 36名 | |