昭和63年、金沢市三ツ屋町に本店を構えて以来、類まれな感性と看板商品「角(つの)パン」でファン客を増やし、今年6月、2店舗目となる野々市店を野々市町役場前にオープンさせたのが、フレッシュベイク ジョアンを営む藤沢謙聖社長である。独学でパンづくりの技術を身につけた藤沢氏に成功の秘訣を伺った。
羽咋市にあるパン屋でアルバイトとして職人の手伝いをしていた若き日の藤沢氏にとって人生を左右する出来事が起こる。2年あまり経ったある日、その職人が突然辞めてしまったため、自らがその後をやらざるを得ない状況に直面する。藤沢氏27歳の時である。「食べることは好きだったし、料理も作っていたが、パンはそんなに好きじゃなかった」と苦笑する。職人の下で2年余り仕事をしたとはいえ、補助的な手伝いをしていただけでパンづくりの知識はゼロに等しかった。それでも専門書を読みあさり、独学でパンづくりを身につけていったという。唯一、その職人から残り生地で作る角パンの作り方を教えてもらっていた。「このパンがなかったら多分パン屋を自分でやっていなかったと思う」と語るほど藤沢氏にとって角パンはインパクトがあった。
角パンの生地は他のパンと何ら変わらない。ただ、通常のパンは成形した後しばらく発酵させ、それから焼くのに対して、角パンは生地の段階で予備発酵させておき、成形するとすぐ窯に入れて焼くという違いがある。それによって独特の硬さ、モチモチ感、歯ごたえが生み出されるのだ。「難しいのは、牛の角をかたどったこの成形ですよ。これがなかなか簡単にはできないですよ」と企業秘密を匂わせる。売上に占める角パンの比率は12%と最も存在感を示す看板商品である。それだけに、品切れになっても10分程で焼きたてを随時提供できる体制を整えている人気ぶりだ。
野々市店のトレードマークでもある石窯は、はるばるスペインから職人を呼び、この場所で煉瓦を積んで造り上げた、ここにしかない石窯である。「石窯は手作りだけに、出来上がってみないとどんなパンが焼き上がるか分からないというリスクもありましたが、幸いにして非常に良い石窯に仕上がりました。コスト的には機械窯の2〜3倍も高くついたものの、価格以上の付加価値があるだけに、どうしても石窯にしたかった」というこだわり。野々市店は敷地が700坪あることから、当初喫茶店やレストランという思いが頭を過ぎらないわけではなかったようだが、「考えれば考えるほど、基本はパン屋、私はパンしかできないのだからこれからもパン屋でいこうと決めた」という。敷地が広く駐車スペースがゆったりと取られた店舗は、自慢の石窯がアクセントになり、一見ペンションかと見まごうばかりである。店の外には洒落たテラスが設けられ、そこで無料のコーヒーを飲みながら焼きたてパンを食べられるのも一つの魅力になっているようで、カップルや親子、友人同士が心地よい秋の日差しを浴びながら談笑している姿が見受けられる。
「経営は常に前向きに、商いである以上はしっかり利益を出していくこと。利益率が悪いと新しい機械も買えないことになってしまいます。常に現状に満足することなく、日々新製品を創り出すための感性を研ぎ澄まし、お客様の声を商品開発にも反映していけるような仕組みづくりも考えていきたい。さらにはホームページを充実することで、常に新しい情報を顧客に発信していくことにも努めていきたい」と藤沢氏の夢はまだまだ留まるところを知らない。次なるステップに向けて「今は投資の時期」と捉え、職人の育成を最重要課題に掲げる。 ■インタビューを終えて・・・
角パンとの出会いでパン職人の道へ入り、持ち前の感性と経営センスで階段を一歩一歩着実に登り、ジョアンファンを増やしてきた藤沢氏。ご子息も加わり、これからのジョアンのパンづくりが益々楽しみである。
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商 号 | (有)ジョアン |
| 所在地 | 金沢市三ツ屋町ロ2−3 | |
| 設 立 | 昭和63年 | |
| 資本金 | 300万円 | |
| 年 商 | 本店1億5千万円 野々市店は初年度3億円を見込む | |
| 従業員数 | 50名(パート含む) | |
| 野々市店 | 野々市町字三納30街区1(野々市町役場前) |